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2015年4月8日水曜日

マンガ「Steves」

ビッグコミックスペリオール(小学館)で「Steves」というマンガが連載されています。

スティーブ・ジョブズとステーブ・ウォズニアックの若い頃を描いた物語です。そこにビル・ゲイツが登場して、なかなか面白い展開になっています。

このマンガ、かなりよく調べてあって、多くの伏線が仕込んであります。

たとえば、ビル・ゲイツの「ホビイストへの公開状」が、結構早い時期に書き込まれてたのは(それも説明なしに、背景として)、マニア心をくすぐります。

「ホビイストへの公開状」については、富田倫夫氏の「パソコン創世記」が一番いい資料だと思います。

第2部 第5章人ひとりのコンピュータは大型の亜流にあらず
1980 もう1人の電子少年の復活「
ホビイストへの公開状

今週は、スティーブ・ジョブズがビル・ゲイツに「(カリフォルニアのいい天気が嫌なら)シアトルにでも引っ越せばいい」と言います。ビル・ゲイツはシアトル出身で、マイクロソフトも後にシアトル近郊に拠点を移すのですが、この時点ではハーバード大学(ボストン近郊、MITの隣にあります)を中退し、アルバカーキーで創業したことしか記述されていません。

Steves」の面白いところは、スティーブ・ジョブズの嫌な面をきちんと(比較的好意的に)書いているところです。もちろんウォズニアックのお人好しの面もきちんと描かれています。

当然、ビル・ゲイツも嫌なやつですし、(マイクロソフト共同創業者の)ポール・アレンはいい人になってます。

ただ、現在発売中の第16話は少し違和感がありました。

Apple IIは整数Basicしか持たないが、マイクロソフトのBasicは、ビジネスに不可欠な浮動小数点数を扱える。

浮動小数点数はビジネス分野には使えません。桁落ちを起こすため、お金の計算は固定小数点数をつかうのが常識です。しかし、Apple IIのBasicもマイクロソフトのBasicも、お金の計算に十分な桁数は、簡単には処理できませんでした。

追加の説明が必要な部分もあります。

ビジネスの中心は東海岸に決まっている

今の人は、西海岸がITの中心だと思っているでしょうが、HPがコンピュータに本格参入し、サン・マイクロシステムズやアップルが大きくなるまで、ITビジネスの中心は東海岸でした。

コンピュータ業界の(当時の)巨人IBMの本社はニューヨーク、2位のDEC(デジタルイクイップメント)はボストン郊外、UNIXを生み出したベル研究所はニューヨーク郊外のニュージャージーが主な拠点です。分散型のウィンドウシステムを実用化したのはMIT(マサチューセッツ工科大学)で、こちらもボストン郊外にあります。

西海岸には、HP(ヒューレットパッカード)とスタンフォード大学、そしてイーサネットやマウスを発明したゼロックスのパロ・アルト研究所があり、決して劣っているわけではありませんが、やはり主流は東海岸だったのです。

いずれにしても、このマンガ、本当によくできていておすすめです。バックナンバーがWebで公開されているので、ぜひ読んでみてください。

ビッグコミックスペリオール発「スティーブス公式無料配信サイト」SteveS

2014年5月11日日曜日

メリー・ポピンズと「ウォルト・ディズニーの約束」

メアリー・ポピンズとCommon Lisp」の続きです。今度こそ技術的な話は登場しませんが、続きなのでこちらに書きます。

ところで私、ずっと「メアリー・ポピンズ」と書いてきましたが、ディズニー映画(ジュリー・アンドリュース主演)の邦題は「メリー・ポピンズ」だということを先月知りました(40年くらい間違って覚えてました)。

お一人様で「ウォルト・ディズニーの約束」を見ました。

「ウォルト・ディズニーの約束」原題は「Saving MR. BANKS」で、「メリー・ポピンズは子供たちではなく、バンクスさんを助けきた」という話と、Saving Account(貯蓄口座、バンクスさんは銀行員です)をかけたのだと思います。

こっちの方がよく出来たタイトルですが、「Mr. BANKS」でメリー・ポピンズを思い出せる人は日本では少数派らしいです。

原作者のP.L.トラバースの少女時代と、ディズニーとの映画化交渉権をめぐる話が交互に進みます。
ディズニーは、多くの作品をめちゃめちゃに、いえ、独自の演出を加えていますから、P.L.トラバースの心配はよく分かります。

プーさんのぬいぐるみを見ながら「A.A.ミルンも可愛そうに」とつぶやくシーンは笑いました(が、他に笑ってる人がいないのはなぜ?)。

「ディズニーは単なる金儲けのために映画を作るのではない」ということで、最後に譲歩するんですが、ここはちょっと物足りなかったように思います。

ウォルト・ディズニー本人が「(駆け出しの頃)『ねずみ』の権利を購入したいという申し出があったが断った」という話をしていますが、もうちょっと聞きたかったところです。

もっとも、映画の本題はP.L.トラバースと父親の話なので、あえて踏み込まなかったのでしょう。

終盤「バンクスさん(メリー・ポピンズがいる家のお父さん)は悪人ではない」ということで、2ペンス(タペンス)で材料を買って、凧の修理をします。2ペンスは、「Feed the Birds」の曲でおなじみ「鳥の餌、1袋2ペンス」です。

「ウォルト・ディズニーの約束」ではここまでしか描かれていないのですが、映画「メリー・ポピンズ」の終盤はこうです。

父を訪ねて銀行に行った子供は、持っている2ペンスを、(鳥の餌を買うのではなく)銀行に預金しろと、銀行員に取り上げられます。

バンクスさんだったか、銀行員だったか忘れました。バンクスさんは、前半、お金に厳しい人に描かれていたので、バンクスさん自身が息子のお金を取り上げたのだったような気もします。

すると、子供は「ぼくの2ペンスを返して」と叫びだし、周囲の人は「2ペンスも返せない銀行か」と誤解して取り付け騒ぎが起き、バンクスさんがクビになるという話だったと思います。

バンクスさんが、責任を問われている会議中、バンクスさんが開き直って、銀行よりも子供の方が大事だと「スーパーカリフラディリステクエクスピアリドーシャス」と歌い出し、なんとなく円満に終わるという話だったような違ったような。
(映画見たの40年くらい前なんで、よく覚えてない)

「ウォルト・ディズニーの約束」では「新しいエンディングを用意した」としか言ってないのですが、これがその「新しいエンディング」です。

P.L.トラバースが、映画化に譲歩したのは、凧ではなく、このエンディングのおかげでしょう。

かなり感動的なシーンなので、詳細は忘れていても、米国人なら当然知っているエピソードなんだそうです(というのは岡田斗司夫さんのお話)。

ということで、だらだら書いてしまいましたが、いいお話でした。

そういえば、同じジュリー・アンドリュース主演の「サウンド・オブ・ミュージック」も、厳格なお父さんが変わっていく話ですね。

2014年4月19日土曜日

メアリー・ポピンズとCommon Lisp

分室のブログとどちらに書こうか迷ったのですが、技術的な話もあるのでこちらに書きます。

評論家の岡田斗司夫さんが、自身の無料メルマガ「岡田斗司夫の毎日メルマガ~力尽きるまで」で、映画「ディズニーの約束」のことを書いていらっしゃいました。YouTubeに音声が上がっています

ディズニーの映画「メアリー・ポピンズ」の制作裏話です。

メアリー・ポピンズは、バンクスさんの家に、子供たちの住み込み家庭教師として雇われます。

この映画、前半は原作の雰囲気そのままに進むのですが、後半になって銀行員であるバンクスさんの話に変わっていきます。堅物だったお父さんが、どうなるのかはぜひ映画を見てください。そして、なぜそうなったのかが「ディズニーの約束」で描かれているそうです。なかなか面白そうなので見たいと思います。

さて、この「メアリー・ポピンズ」、米国では誰もが見ている作品のようです。だから「ディズニーの約束」もメアリー・ポピンズを見ていることを前提に話が進むそうで、多くの日本人にとってはちょっと分かりにくいみたいです。

そこで本題。

Common Lispというプログラミング言語があります。Lispという言語は、1950年代に設計され、1960年頃には広く使われていた非常に古い言語です。

ところが、主に人工知能研究に使われており、産業界では普及しなかったせいでしょうか、多くの方言があります。

自然科学の研究が、仮説→実験→検証→再仮説、というサイクルを回すように、人工知能の研究は、仮説→コーディング(プログラム作成)→検証(実験)→再仮説というサイクルを回します。実験と同じくらいプログラムを書くので、同じプログラムを使い続けることはほとんどありません(部分的な再利用はあります)。だから標準化して、他の人のプログラムをそのまま使えるようにする必要もなかったのでしょう。

プログラムは、事前に手順が決まっているから「実験」というのは奇異な感じがするかもしれません。自然科学だとこうなります。

  1. Aという3つの現象がある
  2. Aを満たすモデルMAを考える
  3. Bという現象が見つかった
  4. MAのある部分を修正すればBも説明できるし、Aも説明できる
  5. 修正MAは、より確からしいモデルである

人工知能も同じように考えて、適用範囲が広がり、整合性がとれるようにプログラムを拡張していきます。

Lispには、主な系列でもMIT(マサチューセッツ工科大学)のMacLisp、ゼロックス社のパロアルト研究所(PARC)やスタンフォード大学で広く使われていたInterlispがあります。東海岸と西海岸ですね。

Common Lispは、1980年代の人工知能ブームに乗ってきた産業界の要請に応える形で、Lispの集大成として計画され、従来のLispにScheme(スキーム)という、Lispベースの言語のエッセンスを取り入れて作られたプログラム言語です(Schemeをベースに、の方が近いかもしれません)。

「どうせなら、良いアイデアをたくさん取り入れよう」ということで、Common Lispは既存のLispとはどれとも違うものになりました。多くの人が集まって規格を決めるとこうなります。

内容はともかく、この時の仕様書の名前が凝っています。仕様書を作ったのは、G. L. Steele Jr.、有名なコンピュータ科学者です。

  • 1981年: Swss Cheese...スイスチーズには穴が空いているところから「穴だらけ」(「トムとジェリー」によく出てくるチーズです)。
  • 1982年: Flat Iron...古い(電気式でない)アイロンの意味で「シワが残る」そうです。
  • 1982年: Colander...水切りざるの意味です。「穴は増えたが前より小さい」そうです。
  • 1982年: Laser...コヒーレントでありますように。「コヒーレント」とは、「首尾一貫した」という意味ですが、光学分野では「位相がそろった」という意味を持ちます。コヒーレントな光のことを「レーザー」と呼ぶのでLaser Editionと名付けられました。
  • 1983年: Excelsior...荷造りのための詰め物だそうです。仕様が確定し、明確なバグ以外は受け付けないということになったので「(荷物を)固定する」という意味なのでしょう。
  • 1983年: Mary Poppins...「Practically Perfect In Every Way(あらゆる意味でほとんど完璧)」という、映画のメアリー・ポピンズの台詞に由来します。

私の知る限り、小説版のメアリー・ポピンズには...「Practically Perfect In Every Way」という台詞はありません。映画では、自己紹介でメアリー・ポピンズが自分のことをこう言います。

Mary Poppinsと言うだけでPerfectと結びつくのは、ディズニーの映画がいかに広く知られているかということですね。

すみません。あんまり技術は関係ありませんでした。

2014年1月21日火曜日

ソフトウェアデザイン2014年2月号「2014年IT業界はどうなるのか?」

月刊ソフトウェアデザイン(技術評論社)の2014年2月号で「2014年IT業界はどうなるのか?」という特集が組まれています。

私は「第3章OSとその周辺技術はどうなるのか」の1ページを寄稿しました。

昨年も同様のテーマで書いており、以下の3点を指摘しました。

  • 仮想マシンの拡大
  • 仮想スイッチの強化
  • クラウドの本格利用

概ね合っていたようですが、誰でも思いつくことでしょうから自慢にもなりません。

今年は以下の3点に注目しています。

  • サーバー運用
  • 仮想ネットワーク
  • 仮想ストレージ

サーバー運用は、マイクロソフトのSystem Center製品や、VMwareのvCenter製品群などをさします。もちろん仮想マシン以外も対象です。2013年以降、仮想マシンと物理マシンの区別はあまり意味がなっています。

仮想ネットワークは、単なる仮想スイッチやVLANではなく、データセンターの存在そのものを仮想化するNVGREやVXLANを意味します。

そして、ストレージは単体の製品ではなくOSや仮想マシン管理製品に組み込まれた機能、Windowsの「記憶域プール」やVMwareのVirtual SAN (VSAN) を意味します。

特に、高機能で高性能なNASの地位が「エンタープライズNAS」として重要視されると予想しています。

詳しくはぜひ書店で「ソフトウェアデザイン」2月号をお求めください。

2013年マイヒット

原稿とは別に、自己紹介欄に「2013年マイヒット」として3つくらい項目を挙げてくださいという依頼がありました。

なるべく違うジャンルから選びたかったので、以下の3点を挙げました。

いずれも、もっと前から注目しているのですが、それぞれ理由があります。

宮崎奈穂子さんは、武道館単独ライブのあと「歌・こよみ365」と称して「1年間で365曲、他の人のことを歌う」という試みを始め、11月に完成しました。現在レコーディング中で、CD完成は2月以降の予定です。

当初は「すべての曲がCDになるわけではない」「一部は無料ダウンロード」という話もあったんですが、結局完全なCDセットになったようです。

2013年は、「歌・こよみ365」完成の年なので、マイヒットに入れました。

「魔法少女まどか☆マギカ」は、劇場版の新作です。テレビシリーズは2011年、総集編(前編・後編)の映画は2012年の公開でした。特に、後編は最初から最後まで泣きっぱなしのいい映画でした。

2013年は、劇場版新作が公開され、「ファンがアンチになる過程」を描いているのが新鮮でした。前作ほど泣き通しというわけではありませんでしたが、衝撃度は前作以上ですので取り上げました。

岡田斗司夫さんは2008年くらいから注目しており、2010年から2013年までサポート組織であるFREEexに所属していました。

2013年は「外郭団体」と呼ばれる利益団体が生まれ、新しいステップを踏み出したところなのでマイヒットに入れました。

本来なら、2013年に初めて出会った人、たとえば高校生シンガーの理星さんや、女優の町宮亜子さん,シンガーソングライターの風見穏香さんなんかを入れるべきなんでしょうが、1人に絞れないのでやめました。

このあたりは 別のブログ「ヨコヤマ企画(分室)」で扱っているので、よかったらどうぞ。

2012年8月9日木曜日

ゲーデル、エッシャー、バッハ――あるいは不思議の環

Webサイト「Computer World」で連載中の「本の特盛り――横山哲也の読書のススメ」、第16回で紹介したのは『ゲーデル、エッシャー、バッハ――あるいは不思議の環

内容は、Computer Worldを読んでもらうとして、気になったのはサブタイトル。

原題は『Gödel, Escher, Bach: An Eternal Golden Braid』、頭文字を取って「GEB」と呼ぶことがよくあります。英語版も日本語版もWikipediaには注釈も付いています(「ゲーデル、エッシャー、バッハ」GEBと呼ばれる」。本文中にも、GEB、EBG、などと並び替えたフレーズも多用されており、一度でも読んだ人なら印象に残っているはず。

そして、サブタイトルの「Eternal Golden Braid」の頭文字を取るとEGBとなり、GEBを並べ替えたものになっています。

そこで気になるのが、サブタイトルの日本語訳。「あるいは不思議の環」です。

英語版ペーパーバックの表紙は「ペンローズの三角形」ですし、エッシャーの作品には「滝」のように、ペンローズの三角形をモチーフにしたものが多くあります。三角形は、ある種の環ですから、直訳ではないにしても、それほど変な訳ではありません。

が、せっかくの言葉遊びが活かされていません。タイトルは編集者に命名権があるのが一般的ですが、他の人は黙っていても柳瀬尚紀が黙ってはいなかったはずです。

この本にはいろんな疑問が提示されていますが、私にとってはこれが一番の謎です。

Penrose_triangle
ペンローズの三角形

SONY DSC
英語版ペーパーバック、黄色いのがペンローズの三角形。
ライトノベル「涼宮ハルヒ」シリーズの登場人物「長門有希」も読んでいた。
(掲載許可撮ったので顔出し。モデルは「しの」さん)

2012年7月12日木曜日

ライトノベル「なれる!SE」

Webサイト「Computer World」に、「本の特盛り――横山哲也の読書のススメ 第15回」として、ライトノベル「なれる!SE」を取り上げました。

担当編集の方には、こんなサブタイトルを付けてもらいました。

「あり得ないだろ」と突っ込みつつ一気読みできるIT業界強引ファンタジー

この本は、日経BP記者の中田さんに(強引に)勧められて読みました。中田さんはよほど気に入ったらしく、自分の元上司にも強引に読ませたそうです。その時のTweetがこれ

これを受けて、元上司の谷島宣之氏が書いた記事がこちら。

記者の眼「『萌えるSE』と「燃える営業」、永遠の闘い」

ストーリーなどは、ことらの方がよく分かるので、ぜひ読んでみてください。

2012年5月16日水曜日

トークショーに行ってきました: 女の子を殺さないために 解読「濃縮還元100パーセントの恋愛小説」

5月5日(土) 19:30- 池袋ジュンク堂書店のトークセッションに行ってきました。

女の子を殺さないために 解読「濃縮還元100パーセントの恋愛小説」』刊行記念ということで、著者で評論家の川田宇一郎氏に加え、ゲストとして文筆家の栗原裕一郎氏が、司会として作家の高原英理氏が登壇しました。

出版社の宣伝では、村上春樹論が中心のようになっていますが、実際には庄司薫を中心に、川端康成や村上春樹について論じています。詳細は「本の特盛り――横山哲也の読書のススメ 第11回」をご覧ください。

書籍の発行部数に比べ、書店の方がずっと多いので、書店では新刊書さえ入手できないことがあります。書店には書店の良さもあるのですが、入手の手軽さではインターネット書店にはかないません。

書店としては、単に書籍を売るだけでなくトークショーのような体験できるイベントで集客するのでしょう。CD店が店内でミニライブ(インストアライブ)を実施するのと同じことです。

さて、今回のトークセッションですが、企画したジュンク堂の試みはありがたいのですが、川田氏とゲストの栗原氏がまったくかみ合わず、たいへん緊張感のあふれたセッションとなりました。途中で、観客の一人が「ぜんぜんかみ合わないから話題を変えた方がいいのではないか」と割り込むくらいです。

栗原氏はそれなりに庄司薫作品を読んでいらっしゃるようですが、どうも作品があまり好きではないようです。しかも、庄司薫4部作の作者自身による解説書というべき『狼なんか怖くない』を読んでいないようで、さらにピントがずれてきます。

たとえば「『海のような男になろう』と言っているのに、その実現性が語られていない」といった指摘がありました。小説『赤頭巾ちゃん気を付けて』は、決意するまでの話ですが、小説内に実現のための方法のヒントが隠されており、さらに具体的な内容が『狼なんか怖くない』で十分に語られています。『女の子を殺さないために』には、『狼なんか怖くない』に対する言及は多くないのですが、庄司薫の読者なら必ず読んでいるはずです。

評論であれば、作品に対する愛情は不要だし、もしかしたら邪魔になるかもしれません。川田氏が「庄司薫作品を好きですか」と聞かれて、「ええ、まあ、え、好きですね」と答えに躊躇があったのは、評論家としての立場を考えたのかもしれません。

でも、トークセッションのゲストには、やっぱり作品を好きな人を呼んでほしいと思います。池袋ジュンク堂のトークセッション企画担当者には感謝していますが、人選はもう少し考えていただければ幸いです。

トークセッションは、最後の質疑応答から急に面白くなります。最初から質疑中心でやった方がよかったのではないかと思うくらいです。その場で質問を受けるのは難しくても、事前に募集できたかもしれませんね。

川田氏が、一番好きな作品は『白鳥の歌なんか聞こえない』で、一番よく出来ていると思う作品は『赤頭巾ちゃん気を付けて』だそうです。これは私の評価と一致します。

さよなら怪傑黒頭巾」は、ノンちゃんとアコちゃんという魅力的な女性が登場するし、薫君のお兄さんも登場する豪華な作品ですが、残念ながら由美ちゃんが登場しません。

僕の大好きな青髭』は、作品自体がよく分からない。雑誌連載はずっと面白かった、というのが川田氏の弁ですが、実際、単行本の方はちょっと不自然なくらい適当な作品に見えます。

その点『白鳥の歌なんか聞こえない』は、由美ちゃんのための作品で、生と性と死が青年らしく描かれていて好きです。

一方の『赤頭巾ちゃん気を付けて』は、よく出来ていて他人に推薦するならこの作品ですが、ファンとしては完成度が高すぎる感じがします。

なお、「庄司薫作品が、新潮文庫からリニューアル刊行されるのに合わせて出版したのか」と聞いたところ、偶然ということでした。すばらしいタイミングです。

庄司薫は、高校時代に読んで、何度も読み返した、私としては珍しい本です。また注目されているようで、ファンとしては喜ばしい限りです。


【追記】

栗原氏ご本人から、以下のコメントをいただきました。

>栗原氏はそれなりに庄司薫作品を読んでいらっしゃるようですが、どうも作品があまり好きではないようです。しかも、庄司薫4部作の作者自身による解説書というべき『狼なんか怖くない』を読んでいないようで

たまたま見てしまったのでコメントしますが、憶測で適当なことを書かれるのは迷惑ですね。批判するのであれば、せめて当日言及された拙著をお読みになってからにしていただきたい。

ご指摘の通りです。大変失礼しました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

2012年1月12日木曜日

本の特盛り: マーク・ルシノビッチ氏の意外な一面と新井素子氏の点々

Comuter WorldのWebサイトで、年末から新連載「本の特盛り」が始まっています。

第2回目は、David Solomon/Mark Russinovich著「インサイドMicrosoft Windows 第4版(上・下)」と、新井素子のSF小説「…‥絶句(上・下)」。

●Mark Russinovichさんのこと

Mark Russinovichといえば、知る人ぞ知るWindows Hacker (本来の意味でのHacker、つまり内部を知り尽くして、あっと言わせる技を使ったり、巧妙なツールを作ったりする人) です。

この人、意外にお茶目な面があります。数年前、米国で開催されたTechEdという技術カンファレンスのプレゼンテーション中に彼のノートPCにチャットによる呼び出しがありました。

プレゼン中にオンラインにしておくのもどうかと思うのですが、面白いのはここから。キーボードから「今、プレゼン中なんだ」と返事をします。まさか返事をするとは思わなかった場内は大爆笑。

最近は「The Case of My Mom’s Broken Microsoft Security Essentials Installation」というタイトルのブログもありました。

母親に買ったPCのトラブルを解決するためにサポートに連絡してばれたらどうしようという話(ちょっと違うか)。

●新井素子さんのこと

1960年生まれなので、今年52歳ですね。私が読み出したのは「まるまる新井素子」が出版された時期で、かなり人気が出てきた頃です。

「もうファンレターに返事は書きません」宣言が出ていたのですが、コピーされた手書きの近況報告に、「おしいことに、ハイユニです、鉛筆は.....」と一筆添えた封書が届きました。

「(「まるまる新井素子」に掲載された写真で)手にしている鉛筆は三菱ユニですか」と書いたので、その返事でした。

そうです。ここで点々が5つだということに気付きました(点々の話はComputer Worldの記事を読んでください)。手紙には他にも何か所か点々があり、全て5つでした。書き癖ですね。

引っ張り出したら、その後葉書が5枚も見つかりました。消印を見ると1984年から1986年にかけてです。「どんだけ手紙書いてんねん」と、思わず自分に突っ込みました。

2011年8月21日日曜日

変わるものと変わらないもの

ずいぶん前に買って見ていなかったDVD「赤頭巾ちゃん気を付けて」を見ました。庄司薫の芥川賞受賞作品です。

高校時代に読んで、薫君(主人公の名前も「庄司薫」です)風に言うと「参ってしまって」、日比谷高校に向かう坂道をわざわざ見に行ったくらいです。

この小説、1970年頃の若者風俗のテキストとして見ることもできます。

薫君は高校3年生、遊びに行くのはたいてい銀座です。今でこそ、銀座は大人の街ということになっていますが、40年前は若者の街だったのです。たぶん、当時の若者は遊び場を変えていないのでしょう。

そういえば、ヨドバシカメラのCMソングに「若者集まる新宿に」というフレーズがあります。銀座のあとは新宿が若者の街になったようです。ちなみに、薫君のシリーズに登場する新宿は繁華街ではなく新宿御苑だけだと記憶しています。

そのうち、今の渋谷も高年齢化し、若者文化の中心は原宿あたりに移動するのでしょうか。

それから、この映画を見てもうひとつ変わらないことを発見しました。山岡久乃が近所のおばちゃん役で登場しています。当然ながら、今よりずっと若いのですが、台詞が今と同じおばちゃん口調。これだけ長い間おばちゃんを演じているのは、きっと山岡久乃と樹木希林くらいでしょう。

さて、IT業界に目を向けてみましょう。頻繁に変わっているように見えますが、実は「所有と使用」、「集中と分散」を行き来しているだけのようです。

大型計算機の課金はCPU時間やディスク容量をベースにしていました。使っただけの金額を払うのが基本です。実際にはリースが多かったので、いくら使っても同じ金額ですが、各部門の使用量に応じてリース料金を負担してもらっていたようです。その後のミニコンやパソコンは自社で所有しているので、「使用料」の概念は消えました。しかし、最近では「クラウド」の登場で、ふたたび使用料の概念が(より複雑になって)復活しています。

集中と分散も同様ですが、面白いことに、集中型は使用(課金)モデルが多く、分散は所有モデルが一般的です。Windowsのターミナルサービス(リモートデスクトップサービス)は、集中・所有型ですが、他のライセンス規定に比べて厳格に適用されます。これは接続クライアント毎に厳密な課金をするためではないでしょうか。