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2019年3月30日土曜日

シアトルの現状を見て ~Microsoft MVP Global Summit 2019~

毎年開催されている「Microsoft MVP Global Summit」に参加してきました。Microsoft MVPだけが参加できる特別なイベントです。

Microsoft MVPサイトより

マイクロソフトの製品やテクノロジーに関する豊富な知識と経験を持ち、オンラインまたはオフラインのコミュニティや、メディアなどを通して、その優れた能力を幅広いユーザーと共有している個人を表彰するものです。MVP アワードの表彰は全世界で行われており、現在は、世界 90 か国以上、4,000 名を超える方々が MVP として精力的な活動を続けています。

Microsoft MVP Global Summit」は、現地(マイクロソフト本社)集合ですが、参加費は無料、2名で1部屋の宿泊費も負担してくれます(シングルルームは半額負担)。

コア日程3日(さらにポストイベント2.5日)では技術カテゴリごとのブレークアウトセッションが開催され、マイクロソフト社内でも一部の人しか知らないような内容が披露されます。また、製品の方向付けを決めるようなディスカッションも多いため、当然NDA(機密保持契約)が必要で、違反者には損害賠償を含めた罰則があります。

このように、NDAの縛りがあるため内容については話せません。そこで、このブログではMVP Summitに行って気付いたことや、ついでに寄ったLiving Computer Museumのことを書きたいと思います。


シアトルで目に付いたのが、Limeと呼ばれる緑の自転車です。詳しくは同僚の山下さんのブログ「シアトルにあったシェアサイクルLimeはすごく便利だと思う」をどうぞ。Limeは乗り捨てOK、見つけたらすぐ乗車可能なので、昔よくいた自転車泥棒の気分を味わえます。

Lime, rental bicycle

日本にも類似のサービスはありますが、決められた場所で借りて、元の場所に返す必要があります。乗り捨てするとすぐに駐輪違反で回収されてしまうでしょう。そういえば、レンタカーも米国では乗り捨てコストがほとんどかからないのに、日本ではとんでもなく高いですね。

もう1つ、便利だったのがUber。スマートフォンのGPSと連動し、契約車(日本だと白タク扱いなので違法です)を呼んでくれます。ダウンタウンなら概ね数分以内につかまるでしょう。呼ぶ時点で目的地を入力し、その時点で金額が固定されます。支払いは事前登録されたクレジットカードを使うので、運転手に支払は発生しません。チップも、乗車後に追加できます。誘拐などのリスクを減らすため、乗車と同時に信頼できる友人に乗車情報を伝える機能があるし、先日は911(日本の110番)通報機能も追加されました。金額は、需給バランスで決まるようで固定されていないようですが、事前に分かるので安心だし、タクシーを上回ることはほとんどありません。

Uberは日本にも進出しているのですが、二種免許の存在やそもそもタクシー事業が許認可制であることから、タクシー会社と提携して運営されています。ただし、利便性は著しく落ちます。規制産業故の制約です。

これに限らず、とにかく日本は規制が多いですね(市民革命を経験していないため「原則自由」の思想がないという説がある)。たとえば、米国での路上ライブはよほど通行の邪魔にならない限り違法ではないのですが、日本では警察が無条件に違法とみなします。本来、違法かどうかを判断するのは警察ではなく裁判所ですが、逆らうと逮捕される可能性がある(逮捕でなくても警察署に連れて行かれる例は多い)ので逆らえません。よほど大規模で計画的なものでない限り、有罪になったケースはないらしいのですが、若いミュージシャンを脅すには十分な威嚇効果です。

国や自治体だけでなく、国民も規制を望む傾向にあります。路上ライブを通報して止めさせるのを趣味にしている人もいるくらいですし、それを支持する人までいます。コスプレイベントも、周辺住民の反対により、コスチュームを着た状態で会場外に出ることは禁止されるのが普通です。コミケ(コミックマーケット)のように、周辺に住宅がほとんどない地域でも厳しく自主規制されています。

ちょうどMVP Summitのために渡米した日、シアトルで「Comi-Con (Comic Convention)」が開催されていて、コスプレイヤーが大勢出歩いていました。コスプレ親子も多く、微笑ましい感じがしました。

コスプレ発祥は米国ですが、発展したのは日本です。その日本で、街頭でのコスプレ禁止というのはちょっと不思議な感じですね。「一般人が怖がる」という説もあるのですが、こんなに目立つ格好で犯罪を犯す人もいないと思います。


コスプレ

スターバックス1号店では、お土産に1号店限定の豆を購入。スターバックスで購入した豆は、世界中どこの店でも挽いてくれます。日本で挽いてもらうと、かなり高い確率で「1号店に行かれたんですか?」と話しかけてくれます。

スターバックス1号店

店内では、オーダーテイカーがバリスタにカップをよく投げてます。

オーダーテイカーからバリスタへ

スターバックス1号店近くにある有名なチーズ屋さん(Beecher's)。最近は行列ができます。私、チーズはそれほど好きでもないのですが、ここのチーズは好きです。

Beecher's


Beecher'sの看板

スターバックス1号店のある一帯が「Pike place Market」、米国でもっとも古い市場だそうです。有名な魚屋さん。アンコウやらサケやらが並んでいます。

どうでもいい写真ですが、hardwareは金物の意味で、コンピューター製品の意味ではありません。mountain hardwareは登山道具のようですね。

hardwareは金物の意味


mountain hardwareでロッククライミングの写真

ワシントン湖からスペースニードルが見えています。

シアトルの夜景

2014年1月4日土曜日

お客様を笑顔にするのが良い仕事

あけましておめでとうございます。

昨年、ある会社の新人研修の総まとめで、役員のスピーチがありました。中でも印象に残っているのが

お客様が笑顔になるのが良い仕事

という言葉です。

今までできなかったことができたり、難しかったことが簡単になったりするのがITの力です。その笑顔は、エンジニアには向けられないかもしれないけれど、笑顔の横顔を見たり想像したりできれば、その仕事は「良い仕事」です。

まっとうな職業で「笑顔にしない仕事」なんてあるのか、と思う方もいるかもしれませんが、残念ながら使い方によってはあります。

ITというのは本質的に省力化の技術です。仕事を楽にする方向に使えば笑顔になりますが、人為削減に使うと笑っていられません。

そういえば、最近また「人工知能が人間の職業を奪う」という議論が出てきました。「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉は1956年の「ダートマス会議」で生まれました。余談ですが、artificialとintelligenceの組み合わせは非常に不自然な語感なんだそうです。そこをあえて採用したと何かの本に書いてありました。

当時は米ソ冷戦の最中、ダートマス会議の翌年、1957年にはソ連が世界初の人工衛星「スプートニク」を打上げるなど、米国民の不安は増大していた次期です。人工衛星の打ち上げ技術は大陸間弾道弾の技術とほとんど同じです。

そういうわけで、ソ連の技術を学ぼうという意識と人工知能が結びつき「機械翻訳」の研究が進みました。そして「機械翻訳が成功すれば翻訳者がいなくなる」と言われました。

実際には(当時の)機械翻訳は失敗しますが、人工知能の研究は続けられ、1980年代の「エキスパートシステム」で再び脚光を浴びます。そして「専門家がいらなくなる」という意見が出るのですが、もちろんそんなことはありませんでした。

最近、また人工知能ブームだそうですが、おそらく人間にとって代わることはないでしょう。私の修士論文は人工知能の分野だったのでよく分かりますが、人工知能っていうのはそんなに簡単なものではないんです。

ですが、ITのもっと地味な分野では確実に省力化が進んでいます。経営者によっては、ITを人員削減の手段として使うでしょう。

クラウドの利用も同じリスクがあります。既に提供されているサービスを使うだけで、構築する必要がないのですから人件費は大幅に削減できます。

ITやクラウドに関わる者としては、人減らしではなく

仕事が楽になり、勤務時間が減り、給料はそのまま

としたいものです。夢のような話ですが、新年の抱負にしたいと思います。もちろん実現可能な目標ではありませんので、意識付けの話ではありますが。

でも、そもそも、産業革命以前はこんなに長時間労働をしていなかったはずなんですよね。

2013年12月13日金曜日

ITILの参考書(12/16追記あります)

近年、「DevOps」というキーワードに代表されるように、開発(Dev)と運用(Ops)を一体として考えるべきだという意見が出てきました。

そういえば、数年前のマイクロソフトの技術イベントTechEdの基調講演では寸劇が披露され、開発者と運用管理者と利用者が、お互いに相手の悪口を言うというシーンがありました。

本来、この三者は対立するものではなく、共通のビジネス目標を持つはずですが、しばしば対立することも事実です。

一方で、システム運用管理のベストプラクティス集としてスタートしたITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、サービスライフサイクルの概念が導入され、開発者にとっても重要な地位を占めるようになりました。これからの開発者はITILを理解して、ITをサービスとして考え、開発から運用までを一体として設計する習慣をつけてください。

ということを、よく講義でお話しします。そして、グローバルナレッジはITIL関連の研修も提供しています。しかし、研修は費用も時間もかかるるため、とりあえず概要だけ分かればいいという方にとっては少々もったいないかもしれません。

そこで、ITIL関連の研修を担当してる同僚に、参考書を推薦してもらいました。

ITIL V3実践の法則

ざっと見ましたが、平易な文章で図が多く、入門書としては適切だと思います。


【追記】
別の講師にも聞いてみたところ、以下の本を薦められました。私はまだ見ていませんが、こちらの方が詳しそうです。

ITIL入門 ITサービスマネージメントの仕組みと活用

2013年9月15日日曜日

オリンピックとITシステム

近年のオリンピックは、ITとも強い結びつきがあります。過去のオリンピックを振り返りながら、2020年の東京オリンピックのシステムを予想してみましょう。

●1964年東京オリンピック

1964年の東京オリンピックでは、競技データの集計システムを日本IBMが担当しました。

当時はバッチ処理全盛期、というかほとんどバッチ処理しかなかった時代、やっと米国のレーダー防衛網システムSAGEや、それを応用した航空券予約システムSABREができた頃でした。

レーダー網と航空機、一見違うものですが、SAGEがレーダー基地からの情報を集計していたのに対して、SABREは旅行代理店からの情報を集計しており、本質的には同じものです。

日本の列車予約システム「MARS」ができたのもこの頃です。ちなみにSABREは座席数の管理しかしていなかったそうですが、MARSは座席番号の予約もできたという話です。

SAGEやSABREの開発には米IBMが関与しており、日本IBMもそのノウハウが使えると考えたようです。しかし、当の米IBMもプロジェクトの成功には懐疑的だったと伝わっています。

詳しくは、Webサイト「大規模プロジェクトの開発──東京オリンピックのシステム構築──」などをご覧ください。

データベース理論もなかった時代、同じデータを2台のサーバーに同時書き込みしていたそうで、苦労が想像されます。今ならデータベースレプリケーションなんてほとんど基本機能になっていますが。

情報処理学会の学会誌「情報処理」1965年3月号に掲載された「オリンピックと情報処理」にはプロジェクト規模の概要が紹介されています。これによると、オリンピックのコンピュータ導入は東京の前、1960年のスコーバレー(カリフォルニア州)冬季五輪からだそうです。

東京オリンピックのシステムは成功し、これが日本の銀行のオンライン化を後押ししたと言われています。それまでは「コンピュータのような信頼性の低い機械に銀行業務を任せるわけにはいかない」と思われていたそうです。

ところで、このブログを書くのにいろいろ検索していたら「世界初のオンラインシステムが日本で動いた」という記事を見つけました。少々誤解を招く記述があったので、補足しておきます(この補足が役立つかどうかは分かりませんが)。

まず、「MARS」が世界初のオンラインシステムとなっています。前述の通り「座席予約」としては世界初ですが、MARSの数か月前にSABREが動作していますし、軍事用にはSAGEもありました。

次にMARSがベンディックス社のコンピュータを使っているように読み取れる箇所がありますが、少なくともMARSに関しては参考にした程度で実際のコンピュータは日立製作所が担当しています。また、レミントンランド(後のユニバック、現在のUNISYS)社の関与が示唆されていますが、MARSに関しては無関係のはずです。

当時の日本法人はコンピュータのブランドを付けた「レミントン・ユニバック」でしたが、もともとはレミントン・ランドという社名でした。本文に説明なしに登場する「RR」は「レミントン・ランド」の略称と思われます。

●1972年札幌オリンピック

すみません、見出し付けましたが札幌とITの関係はよく知りません。ちなみに、当時は冬季オリンピックと夏季オリンピックは同じ年に開催されていました。

私は、東京オリンピックでは2歳だったのでほとんど記憶にないのですが、札幌はよく覚えています。スキーの70mm級ジャンプ競技が金・銀・銅と日本が独占したこと、90m級では残念な結果に終わったこと、フィギュアスケートのジャネット・リン選手が転倒しながらも笑顔だったことが印象的です。

たぶん、50歳代以上の人なら「(失敗しても)ジャネット・リンを見習って」と言えば通じるはず。

あとはトワエモアのテーマソングでしょうか。

●1998年長野オリンピック

1998年2月に開催された長野オリンピックでは、ITが大きな役割を果たしました。詳細は「情報処理」1998年2月号の論文に詳しく紹介されています。

長野オリンピックのネットワークと情報提供システム
重近 範行 , 中村 修 , 笹川 信義 , 村井 純
情報処理,39(2), (1998-02-15)

オリンピックの情報がWebサイトで公開されるようになったのは、非公式には1994年のリレハンメル冬季五輪から、公式には1996年のアトランタからだそうです。つまり1998年の長野冬季五輪は公式サイトになってから2回目ということになります。

アトランタの実績などを基に、IBMが予測した長野オリンピックのアクセス数は1日に1億ヒット(毎秒1157ヒット)です。当時のYahoo!のアクセス数が1日500万ヒットだったことを考えると、いかに大きいかが分かるでしょう。ちなみにGoogleの創業は1998年9月なので、長野オリンピックのときは存在すらしていませんでした。また、Wikipediaによると現在のYahoo! Japanのヒット数は2009年で1日19億だそうです。

利用されたネットワークは、T3回線(45Mbps)が2本だそうで、単純に規格上の数字だけ見ると、現在の家庭用インターネット接続と同程度でしかありません。

当時、既に負荷分散技術はあったのですが、DNSラウンドロビンを使うのが一般的でした。ただし、DNSラウンドロビンによる負荷分散はIPアドレスによる経路選択ができないこと、クライアントキャッシュが有効な間は負荷分散ができないことから、最終的にはIPアドレスによるロードバランスが採用されたようです。

当時、既にIPv6のエニーキャスト規格は存在しましたが、当然のようにあきらめたそうです。現在でもIPv6は家庭にはほとんど普及していません。論文では「結局、エニーキャストを自前で実装したようなものだ」という記述がありました。

コンテンツを保管するストレージは、世界数か所に分散させ、DFS(WindowsのDFSとは違う技術です)を使って同期しています。サーバーは各拠点に数十台、拠点内では負荷を考慮した分散を行なうことで、応答時間を短縮します。

2020年東京オリンピック

2020年の東京オリンピックではどんな技術が使われるのでしょう。

基本的なインフラは、クラウドに依存するでしょう。期間限定で、急激なトラフィック増減をさばくにはクラウドが最適です。

Webサーバーやデータベースサーバーだけでなく、CDN(コンテンツデリバリネットワーク)による配信も当然使われるはずです。

そして、これを契機に日本でもクラウド利用が本格化し、基幹業務をクラウドに移行する企業も増えるでしょう。

また、1964年は2年の歳月をかけてプロジェクトを完遂したそうですが、それほどの時間をかけることはないでしょう。

IPv6のエニーキャストは使われるでしょうか。あと7年もあればIPv6はある程度普及していそうな気もしますが、よく分かりません。10年以上前から「IPv6はもうすぐ普及する」といって、全く普及していませんからね。

ちなみに1964年のプロジェクトでは、途中でプロジェクトが遅れ、人員を大量に追加したそうです。「遅れているプロジェクトに人員を大量投入するとさらに遅れる」というのはプロジェクトでよくある話ですが、この時は、プロジェクト初期から詳細なドキュメント記述を強制していたため、大きな遅れはなく、人員の追加は多大な効果を上げたそうです。

【追記】もちろん、現在のオリンピックでは既にクラウドもCDNも使われています。ソチの冬季オリンピックでは動画配信にMicrosoft Azureが使われ、CDNが活躍しました。

2012年6月7日木曜日

デジタル化は大衆化

古い友人である及川卓也さんの著書「挑まなければ、得られない」は、ブログ「Nothing ventured, nothing gained」を書籍化したものです。

ブログには、Creative Commonsの「CC BY 3.0」、つまり著作者のクレジットを表記すれば自由に利用できる旨が宣言されています。書籍は、利害関係者が多く、著者が関与しているのは全体の10%程度なので、こちらはCreative Commonsではありません。

Creative Commonsというのは、ある作品を土台に、さらに高いレベルの作品を生み出すための宣言です。だから、及川さんのブログをもとに、さらに深く考えることが期待されているのだと考えていいはずです。

そこで、「挑まなければ、得られない」で取り上げられた「Nothing ventured, nothing gained」の記事をを読んで思ったことを時々書いていきたいと思います。

まあ、この前置きが一番立派で、内容は大したことないと思います。以下の記事を書いてからそう思いました。せっかく書いたので公開しますが、自分が思ったことを書いただけです。


デジタル社会に生きるということ」(Nothing ventured, nothing gained)

この記事に、「デジタルは文化を再生産する」というフレーズがあった。デジタル化された時点で、劣化なしに複製ができる上、加工も用意である。フィルム撮影された写真に傷があった場合、昔は職人さんが筆で消していた。これを「レタッチ」と呼ぶ。レタッチ(retouch)は、「タッチし直す」という手作業を意味していたが、現在は画像編集ソフトで簡単にできるし、失敗してもすぐやり直しができる。

私が大学生の頃にCD(オーディオ)が発売された。当時はデータ保存用にCDを使うことは想定されていなかったし、CDを丸ごとコピーできる記憶媒体も存在しなかった。ハードディスクの容量が200MB程度の頃だったと思う。

それでも、デジタル化されることで劣化のないコピーが低コストでできることは理解できた。当時、CDを高級オーディオと思っている人も多かったが、44.1KHzでサンプリングした音楽が「高級」とは言えないことは明らかだった。

オーディオには特別な思い入れがなかったので、比較的早い時期(1985年)にCDプレーヤーを購入した。日本マランツの製品で、今調べたらたぶんCD-34という型番だと思う。

当時は、アナログレコード(LP)とCDが当時発売されるケースが多かったのだが、CDの方が若干高価で、しかも特典はLPのみ、というケースが多々あった。

たとえば、斉藤由貴のCDなんかも、LPだけにポスターが付いていたと記憶している。これはかなり魅力的だったのだが、結局CDだけを買った。

斉藤由貴のCDは今でも問題なく再生できる。そのちょっと前に買ったLPには反ってしまって再生できないものもあるので、たいいへんありがたい。しかも、今のうちにCDの内容をコピーすれば、CDそのものが劣化しても内容を保存できる(これは面倒でやってないけど)。

アナログ記録を行なっていたレーザーディスクは完全に消えた。ディスクサイズが大きかったのが問題ではないと思う。アナログ故に、量産しても低価格化が難しかったのではないかと想像する。

その点、DVDは今後の利用も期待ができる。DVDプレーヤはCDを再生できるし、Blu RayプレーヤーもDVDを再生できる。喜ばしいことである。

ひとつだけ気になるのはコピー保護機能だ。このおかげで、コンテンツの寿命が媒体の寿命で制限される。DVDのコピー保護はほぼ完全に破られているが、現行の日本の法律では保護されたDVDの内容をハードディスクにコピーするだけで違法になる。著作権法的には何ら問題ない行為だが、別の法律で制限されている。Blu Rayに至っては、コピー保護機能をあとから強化する機能を最初から備えているため、コピーそのものが非常に難しい。困ったことである。

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2011年11月28日月曜日

ブランド戦略~シャープの話~

Computer Worldに「企業イメージとブランド戦略――誰がイメージを作るのか」という記事を書きました。

シャープの話を書いていて思い出したことがあります。

液晶製造で有名な亀山市が何県にあるかご存じでしょうか。この県は、亀山市の他、伊勢神宮、真珠養殖が実用化された英虞湾、鈴鹿サーキット、松阪牛で知られた松阪市などで有名です。

答えは三重県。有名な地域やブランドを数多く抱えている割には知名度が高くありません。県庁所在地も答えられない人が多いのではないでしょうか(答えは「津」)。

県に対して統一イメージを与える必要性は全くありませんし、人為的なイメージ作成は、むしろ歴史や文化に対する冒涜かも知れませんが、「知名度」という点では実に損をしています。

シャープと言えばもうひとつ。1970年の万国博覧会(大阪万博)に出展せず、奈良県天理市に大きな研究所を作ったことでも有名です。コピーは「千里より天理へ」だったそうです。千里丘陵は、万博会場のあった場所で、大阪府豊中市・吹田市・茨木市・箕面市にまたがる地域を指します。

大阪万博でソニーが何か出していたかどうかは記憶にないのですが、松下電器(当時)は竹林を模した会場に、タイムカプセルを展示していました。万博終了後は大阪城公園に埋められているそうです。

東芝は、東芝EMIとしてマルチスクリーンの大画面で映画を映写していました。日立は巨大なエスカレーターで中に入り、フライトシミュレータの操作ができました。サンヨーは「人間洗濯機」という、スポンジボールを入れた洗濯槽見ないな風呂に水着の女性が入っていました(これは写真でしか見てません)。

家電各社が、自社のイメージアップに多大な費用をかけていた時期に、研究所を建てるという経営判断は、長い目で見ると良かったのではないかと思います。

天理の研究所からは、後の電卓戦争を勝ち抜いた半導体技術、現在でも有名な液晶ディスプレイ、そして太陽電池などが生まれました。

このあたりのことは、インプレス社のAV Watch「大河原克行のデジタル家電 -最前線-」の「シャープ、中興の祖である佐伯旭氏が死去 ~千里から天理へ、緊プロなど、エピソードを振り返る~」で紹介されています。

2011年11月21日月曜日

ソニー「スカイセンサー5900」

Computer Worldに「ソニー製品に見るユーザーインタフェースの「あったらいい…な?」」という記事を書きました。

記事中、短波ラジオの話が出てきます。コンピュータと関係ないばかりか、デジタルですらないので詳しい話は省略しましたが、ここで、少し技術的に突っ込んだ話をしておきます。そうでないと気が済まないので。

現在、ほとんどのラジオでは「スーパーヘテロダイン」という方式が使われています。これは、放送電波を「中間周波数」と呼ばれる固定波長の信号に変換してから処理する方法です。

中間周波数を用いる利点は主に以下の3つです。

  • 回路設計が容易…高周波信号よりも、低い周波数の方がトラブルが少ない
  • 混信を減らせる…単一周波数なので、優れたフィルタを利用可能
  • 発振しない…中間周波数の一部がアンテナの入力に戻っても周波数が異なるため発信しない(「発振」とはハウリングみたいな現象)

通常、中間周波数の10倍くらいまでの信号を扱うのが効果的とされています。AMラジオでは455KHzが一般的です。中波放送は540KHzから1600KHzの範囲です。3925KHzの短波帯の「ラジオにっけい」(旧称「ラジオたんぱ」)でも問題ありません。

ところが日本のFM放送は80MHzから90MHz、米国では108MHzまでを使います(米国のFM帯域は日本のアナログテレビの1チャンネルから3チャンネルと同じ帯域です)。そこで、FMラジオでは10.7MHzの中間周波数を使うのが一般的です。

10.7MHzは、AM放送周波数に比べて非常に高いので、「回路設計が容易」という条件はあてはまりませんが、他の条件は有効です。

一般に、BCLラジオはAM放送帯域に加えて、3MHzから30MHz以下の帯域をカバーします。実際の放送としては20MHzくらい以下までが多かったと記憶しています。

455KHzの中間周波数を10倍すると4.55MHzなので、20MHzには全然足りません。そのため、ほとんどの短波ラジオは高周波帯域での性能が不足していました。

ソニーの「スカイセンサー5900」は、FMラジオ用の中間周波数回路を短波帯のAM処理に流用することで、この問題を解決しました。10.7MHzの中間周波数は、さらにAM用の455KHzに変換されて処理されます。2回変換するので「ダブルスーパーヘテロダイン」と呼びます。

ちなみに、ダブルスーパーヘテロダインを採用したラジオには三菱電機の「ジーガム」がありましたが、これはほとんど売れていなかったはずです。

スカイセンサー5900に話を戻します。BCLラジオにもFMチューナーは内蔵しているので、10.7MHzの中間周波数は部品点数を減らす上で非常に効果的でしたが、欠点もあります。それは10.7MHz付近の放送が聴けないことです。ここには10MHzの標準電波(JJY)の他は、日本で人気のあるラジオ局はなかったはずですが、切れ目があるのはか悔しいものです。

スカイセンサー5900と同時期に発売され、人気を二分していたのがパナソニックの「クーガ115」です。シングルスーパーヘテロダインですが、中波領域から30MHzまで切れ目なしに受信できるのが「ウリ」でした。

1.6MHzから3MHzの間の周波数は日本では使われていませんが、赤道付近の国が国内放送用に使っているため「トロピカルバンド」とも呼ばれます。あまり一般的な局ではありませんが、そこにあるのに聞けないのは残念です。

Computer Worldの記事に書いたように、操作性が悪いだけでなく、聞こえない周波数があるのが嫌なので、私はクーガ115を使っていました。

なお、パナソニックがスカイセンサー5900対抗機種を出すのは1年後の「クーガ220」です。これは、2MHzの中間周波数を使ったダブルスーパーヘテロダインです。2MHz付近は放送局が本当にほとんどありません。30MHzまでカバーするのもぎりぎり大丈夫です。

スカイセンサー5900のウリだったクリスタルマーカーによる校正機能はもちろん、周波数リニアなダイヤル(周波数が等間隔に並ぶダイヤル)を使うことで、単一ダイヤルで正確な周波数選択ができるようになっています。周波数リニアな特性を持たせるには、コンデンサの容量を複雑な関数曲線に従わせる必要があるため、アナログ的には非常に困難です。そのため、マニアの間では結構大きなニュースになっていました。

しかし、その後、PLL方式の受信機が一般化し、デジタル技術と融合することで、周波数をテンキーから入力するだけで選局ができるようになりました。今までのやり方は(基礎技術を除いて)全く無駄になったということです。

技術者が必死で解決したことも、全く別の技術によってあっさり実現できてしまうのは恐ろしいものです。