2019年4月1日月曜日

Living Computer Museum(その4) ~ワークステーション編~

まだまだ続きます。

ここの博物館で、もっとも興味をひかれたのがXEROX社のPalo Alto Research Center (PARC) で開発されたALTOの復刻版です。

XEROX社は、このままコンピュータ化が進むとコピー需要が減ると考えてコンピューターの研究をしていました。

PARCはその中心地で、以下のような技術が研究されていました。

  • ワークステーション…1人が1台のコンピューターを占有する考え方です。現在では当たり前のことです。
  • ビットマップディスプレイ...画面上のドットをメモリに割り当てる仕組み。現在のグラフィック表示の基礎です。
  • マウス…最近はタッチデバイスに押されていますが、現在でも広く使われているポインティングデバイスです。
  • Ethernet LAN…後にDIX(Xerox、Intel、DEC)規格となりました。その後IEEE 801として標準化されますが、現在でもUNIXのLANはDIX規格をベースにしています。
  • レーザープリンター…XEROX社のコピー技術を応用したプリンターで、現在のビジネスプリンターの標準方式です。

残念ながらXEROX社はこうした技術の商用化に失敗し、LAN研究をしていたロバート・メトカーフ氏は3COM社を設立(後にHPが買収)、プリンター用のページ記述言語を製作していたチャールズ・ゲシキ氏とジョン・ワーノック氏はAdobeを設立し、PostScript言語を開発します。

また、ワークステーションのデモを見たスティーブ・ジョブズ氏やビル・ゲイツ氏がウィンドウシステムの開発を決心したのは有名な話です。

ちなみに、PARCでワードプロセッサーの研究をしていたチャールズ・シモニー氏はマイクロソフトで表計算ソフトウェアMultiplanやExcel、ワードプロセッサーWordなどを開発します。

復刻版ALTO(モニター)

復刻版ALTOは、実際に起動するところを見せてもらいました。

復刻版ALTO(電卓アプリ)

復刻版ALTOで動作する電卓アプリ。

ALTOエミュレーター(左)と復刻版ALTO用ディスクパック(右)

ALTOの起動に使われたディスクパックはDEC製でした(写真右)。また、ALTOエミュレーターも動作していました(写真左)。

ALTOエミュレーター(自宅で実行)

ALTOの直系システムStar(これは商用化されており、日本ではJ-Starとして販売されていました)のエミュレーター「DarkStar」はGitHubで公開されています。自宅で実行してみました。エミュレーターとシステムソフトウェアが別々に公開されていることに注意してください。

なお、J-Starはワープロ専用機として販売されており、プログラム環境はなかったと記憶しています。Starについては分かりませんが、エミュレーターとしてスタンフォード大学で開発されたLisp言語「Interlisp」にGUI機能を追加した「Interlisp-D」が動作しました。

Interlispは、MITで開発されたMacLispと並んで人気があり、西のInterlisp、東のMacLispと言われていました。

試作マウス

試作版マウスも展示してありました。最終的に3つボタンマウスが採用されます(日本では「みっつキーマウス」と呼んだ人もいます)。左ボタンは現在と同じ使い方ですが、現在の右ボタンは中央ボタンに割り当てられました。

残った右ボタンはウィンドウの拡大やクローズなどの操作メニューを表示します。当時のウィンドウには、現在のようなウィンドウハンドルがなく、マウスで「つかむ」という操作ができなかったためです。1980年代になってもX Window Systemのuwmでは同様の方式が採用されていました。

最初期のPC用マウス

最初期のPC用マウスは2ボタンでした。ボタンの使い方は前述の通りで、実質的にPARCの3ボタンマウスと同じ使い方をします。

PARCの研究では、2つ以下だと操作性が落ち、4つ以上だと操作に戸惑うことが分かっています。Macintoshでは、スティーブ・ジョブズの一存で1ボタンに決まったとされていますが、おかげで操作性が随分低下しています。

最初期のPC用マウス(裏面)

移動距離は底面の金属ボールの動きで検出しています。後にゴムボールになり、現在は光学式が主流です。

ワークステーションの源流については以上です。


その他、初期のコンピューター関連展示物で、前回までに書きそびれたものをついでに紹介します。
PLATOシステムの端末

PLATOシステムの端末です。PATO上で動作する情報共有システムとして「Plato Note」というソフトウェアがありました。これが後の「Lotus Notes」に発展します。

私は、前職でPlato NoteをベースにしたVAX Notesという製品を使っていました。

ENIGMA暗号機

第2次大戦でドイツ軍が使った暗号システム「ENIGMA」。暗号化技術とコンピューターは密接な関係をもって発展します。

十進計算機(手動)

手動式の十進計算機。日本や中国には算盤があったので、この種の計算機はほとんど見ません。

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