2019年4月14日日曜日

Living Computer Museum(その5) ~Apple編~

現在のPCの基礎を築いたApple製品ももちろん数多く展示されています。

これは Blue Box と呼ばれた「製品」で、世界中どこでも無料で電話をかけることができました。電話会社の交換機のバグを利用しています。当時は不正アクセス禁止法的なものがなかったはずなので、違法かどうかは分かりませんが、製作者のスティーブ・ウォズニアック(Appleの共同創業)が違法と言っているそうなので違法なのでしょう(Apple設立につながる電話ハッキングデバイス「ブルーボックス」についてウォズとジョブズ、関係者が語る)。

ちなみに、本来「hacking」はニュートラルな表現で、「工夫してうまいことやる」くらいの意味です。Blue Boxは電話交換機のhackであり、違法なものでした。

Blue Box (無料で電話をかける装置)

このBlue Boxを売りさばいたのがスティーブ・ジョブズで、最後はヤクザとトラブルを起こして殺されかけたそうです。

後にApple Iと呼ばれた製品(完成品ではなかった)

ステーブ・ウォズニアックが作ったApple I。ただし、設計中はまだ名称はなかったようです。Appleという社名はスティーブ・ジョブズが考案したそうです。

Apple Iの電源(パワートランジスタ)

スイッチングレギュレーターは一般的ではなかったため、パワートランジスタを使ったシリーズレギュレーターを使っているようです。

Apple II (スティーブ・ウォズニアック設計の傑作)

完成品として売り出されたApple II。ケースのデザインにはスティーブ・ジョブズの影響が強いとされています。一方、Apple IIの特徴である多数の拡張スロットはスティーブ・ウォズニアックが断固として譲らなかったとか。また、回路図も公開されていました。

この拡張スロットに別のCPUボードを装着することもできたようで、ザイログZ80を搭載しCP/M (当時広く使われた8 bit CPU用OS)を動かした人もいました。

回路図を公開し、仕様を公開した拡張スロットで機能を強化する考え方は、後にIBM PCに引き継がれます。

一方、スティーブ・ジョブズはあくまでもクローズドな環境にこだわり、中を開けることすらできないMacintoshプロジェクトを率います。

Apple III (まだ5インチFD)

Apple IIの後継製品Apple III、ビジネス的にはあまり成功しなかったようです。

Apple Lisa 2 (本来Macとは別プロジェクト)

フルGUIのLisa (写真はLisa 2)。Lisa開発中、スティーブ・ジョブズがPARCでのデモを見て、キャラクタベースからGUIに方針転換されたそうです。

Macintoshのケース内側(開発者のサインが刻印されている)

その後、素行不良でLisaのプロジェクトを追い出されたスティーブ・ジョブズが乗っ取ったのがMacintoshプロジェクト。初代Macintoshの筐体内部には開発のサインが刻印されています。

先に書いたとおり、一般的なツールでは中を開くことすらできないのに、こんな刻印を入れるのは自己満足の塊ですが、開発者としては嬉しかったことだと思います。

Macintosh SE (この辺からMacが実用的になった)

初代Macintoshからしばらくは縦長の一体型でした。3.5インチフロッピーディスクが採用されたのもここからです。なお、初期の3.5インチフロッピーディスクには自動シャッター機能がなかったのですが、Macintoshのために作られたという噂です(参考:記録メディアの歴史)。

マウスボタンを1つにしたのもスティーブ・ジョブズの決断です。PARCの研究では、3ボタンが最も生産性が高いことが分かっていたのに、あえて1ボタンを採用したのは、生産性よりも単純さを優先したからのようです。

なお、PARCではマウスの右ボタンは、ウィンドウのサイズ変更や移動に使っていたので、3ボタンマウスは現在の感覚では2ボタンと同じ操作になります。ウィンドウ端をつかむ部分(ウィンドウハンドル)はありませんでした。

IBMがPCに参入したときに出したAppleの広告

IBMがPC業界に参入する前、ウォールストリートジャーナルに掲載した広告。

Welcome IBM. Seriously

英語の定型句なら

Welcome IBM. Sincerely. (IBMの参加を心から歓迎します)

となるのでしょうが、ちょっと違います。無理に訳すとこんな感じでしょうか。

IBMの参加をマジで歓迎します。

この広告は、コンピュータ界の巨人IBMの参入をAppleは恐れており、単なる空元気だったという説もあれば、Appleは自社に自信があるため、余裕を持ってIBMを「おちょくってる」という説もあります。

その後、ご存じのようにAppleは、Apple IIの思想を受け継いだIBM PCにビジネス的には大敗しますが、Macintoshシリーズは市場シェア以上の存在感を維持し、DTP分野を中心に広く使われるようになります。

もっとも、初期のMacintoshの販売戦略は混乱気味で、DTP市場を獲得したのも偶然の要素もかなりあるようです。

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