「Web 2.0」という言葉はちょっと古くなり、「クラウド」という言葉も目新しさはありません。そもそも両者は違う概念です。
「Web 2.0」は、情報の送り手と受け手の区別がなくなった状態、あるいは誰でも情報を発信し、それが一定の影響力を持つような現象を指します。
一方「クラウド」は、必要な時だけ、必要な量のコンピューター資源を使い、使った分だけ支払うという仕組みです。
しかし、両者にはなんとなく同じ「匂い」がします。
インターネットの商用利用が解禁された1996年頃、ISPと契約すると自分のWebサイトが自動的に付いてきた時代がありました。その名残で、私も自分のWebサイトを持っています。
当時の雑誌記事を見ると「これで世界に情報が発信できる」と書いてありました。
しかし、冷静に考えてみると、確かに発信は出来るのですが、誰も受信してくれません。検索エンジンはありましたが、AltaVistaのような自動収集型(ロボット型)の検索サイトは思った結果が表示されず、当時のYahoo!に代表されるディレクトリ型(人手による設定)のサイトは登録に時間がかかるため、キーワードによるコンテンツ検索はほぼ不可能でした(グローバルナレッジをYahoo! Japanに登録してもらうのに数日かかっています)。
そもそもWebサイトを作るには、HTMLを自分で書く必要がありました。HTML構築ツールはありましたが、どちらかというと専門家向けで、そう簡単に使えるものもでありません。
当時の人がいかに苦労したのかは、モデル出身のブロガー「まつゆう*」さんの記事「祝!まつゆう*Webで情報発信15周年」をご覧ください。
ここには書いていませんが、HTMLを書いていると「おたく」と思われて仕事が減ったという話も、今思えば面白い話です。
本当の意味で「情報発信」ができるようになったのは、ブログとトラックバックのおかげだと思います。
ブログサービスは、誰でも簡単に使えるため、自分で自分のコンテンツをすぐに作れます。これは「オンデマンドセルフサービス」という、クラウドにとってとても大事な原理と同じです。
トラックバックは、複数のブログを簡単に結びつけてくれます。現在は、検索エンジンが発達したことと、トラックバックスパムが増えたことから、トラックバックを廃止するところが増えていますが、2000年頃には非常に大事な仕組みでした(トラックバックが最初に実装されたのは2002年だそうです)。
ある会社向けに作った「クラウドコンピューティング」のテキストには、ブログを含めた「Web 2.0」の話が紹介されています。この内容は本当にいるのか、という点については議論があったようですが、最終的に人材育成部の判断で含めることになりました。
確かにクラウドというシステム基盤から、Web 2.0というコンテンツへの説明はちょっと違和感もあります。しかし「誰でも自分で情報発信ができる」というWeb 2.0の特徴から「誰でも自分でシステム基盤が作れる」という風に発展したと考えると納得できるのではないでしょうか。
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