旧友の及川卓也さんのブログ「Nothing ventured, nothing gained.」の記事「UXから考える翻訳」に、IT用語として外来語をそのままカタカナにして使うことに関する指摘がありました。
- 利点…それが専門用語であり、一般用語とは別であることが明確になる。
- 欠点…多用すると、もはや日本語とは言えないような文章になってしまう。
この問題は、翻訳だけではなく母語についてもあてはまります。
一般に英語は造語能力がそれほど高くないため、日常用語の流用が多く見られます。たとえば、及川さんのブログにも出てきた「HELP」。日本語だと「ヘルプ」ですが、英語国民にとっては「手助け」くらいの意味でしょう。
ご存じの通り、ITでいう「ヘルプ」は、操作や意味が分からないときに使う機能のことです。デートの待ち合わせをすっぽかしてしまって怒っている彼女から助けてくれるわけではありません(この場合、助けて欲しいのは彼女の方かも知れませんが)。
「借金で困っているからHELPを選んだけど助からなかった」という英語のジョークをどこかで見ました。
その点、日本語で「ヘルプ」と書いてあれば人生の問題は解決できないことがすぐ分かります。
明治期、特に数学分野では多くの専門用語が日本語化されました。たとえば「行列」は「matrix」の訳です。「マトリックス」よりも「行列」の方が親しみやすい気がしますが、日常用語の行列は「一列に並んだ状態」を示すのであって、縦横に並ぶことは意味しません(こちらの数学用語は「待ち行列」、英語では「waiting queue」)。日常用語だから分かりやすいというわけではないのです。
カタカナを使うことで、最初は取っつきにくいかも知れませんが、正確な理解ができます。と言っても、最初の取っつきにくさは後の学習に影響するので、IT教育に従事するものとしては何とかしたいとは思っています。いまだに良い案はないのですが。
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