2015年4月6日月曜日

SoftLayerとワトソン君

IBMが提供するIaaSサービス「SoftLayer」は、ベアメタルサーバーを時間単位で使用できることや、データセンター間のプライベートネットワークが追加料金なしで使用できることですが、ほぼリアルタイムのサポートにも注目したいところです。

たいていの問題は無償サービスチケットの範囲で多くの問題が迅速に解決されますし、チケットの使用は極めて簡単でカジュアルです。また、チャットサービスによるリアルタイムサポートも優秀です。

特に、チャットサービスはほとんど待たされることもなく、大変快適です。ちょっと心配なのは、このまま利用者が増えてくるとサポート要員の手が回らないのじゃないかということです。

考えられる選択氏は3つあります。

  1. サポートが不要なほど品質を上げる
  2. サポート要員を増やす
  3. サポートを自動化する

品質向上は、コストを上げる要因にもなるので、使用料金が上がったり、IBMの利益率を圧迫する可能性があります。一定の利益を確保するのはサービス継続に必要なことなので、ある程度は儲けてもらわないとこちらも困ります。

サポート要員の増加は誰でも思いつくことですが限度があります。「この調子で利用者が増えれば、世界のITエンジニアの全員がSoftLayerのサポート担当者にある」みたいなことになってしまいます。

かつて、電話網が発達していった頃「このまま電話が普及すると全米の国民が交換手にならないといけない」と言われたそうです。

実際には、自動交換機の発明により交換手は増えるどころか減っています。もっとも「電話番号を入力する」というのは、本来交換手の仕事だったので、ある意味「世界中の人が交換手になった」とも言えます。

1970年代は「このままだと世界中の人が全員プログラマになっても...」などと言われていましたが、実際はソフトウェア開発ツールの発達で、ITエンジニアに対するプログラマの比率はむしろ下がっています(昔はシステム管理専門の人など、ほとんどいませんでした)。

ただし、普通の営業担当者がExcelマクロを自在に使いこなしているのを見ると、ある意味「全員プログラマ」かもしれません。

クラウドサービスは、従来IT担当者が行っていたシステム構築をエンドユーザーが行うという意味で自動化とも言えますが、「全員がIT担当者になった」とも言えます。

サポート問題の解決も「全員がサポート担当者になる」可能性があります。でも、現在のサポートエンジニアと同じスキルを誰もが身に付けるのは無理です。

そこで「サポートの自動化」が必要になります。サポートエンジニアが参照している「ナレッジベース」を、エンドユーザーが簡単に使えるようにするわけです。

1950年代に始まった人工知能は、1970年代に一定の成果を上げ、1980年代に実用技術に発展しています。そこで分かったことは「専門知識ほど扱うのが容易である」ということです。対象領域(ドメイン)を狭く絞れば、自然言語(人間の話す言葉)でのやりとりも可能になりました。

近年は、検索エンジンと組み合わせることで、より高い精度を実現していいます。IBMの研究プロジェクトの成果「ワトソン」は、米国のクイズ番組「Jeopardy!」に参加し、人間に勝利しました。

クイズ番組は対象ドメインが広いように見えて、実は「文章化された知識」という狭い領域しか扱っていません。

そう考えると、SoftLayerのチャットサポートを、ワトソンである程度置き換えることは十分可能ではないかと予想しています。少なくとも一次サポートには有効ななずです。

ところで「ワトソン」の名前は、IBMの実質的な創業者トーマス・ワトソン・シニアと、コンピュータ事業に参入を決めたトーマス・ワトソン・ジュニア、そしてその名を冠したIBMの研究所の名前に由来するのだと思います。

一方、古いWindowsユーザーにとって「ワトソン」といえば「ワトソン博士」の方が有名かもしれません。「ワトソン博士」の由来はシャーロック・ホームズの助手の名前で、そのココロは「(ホームズに)ヒントを提供するが、問題は解決しないから」だそうです。

データ伝送分野ではもう1人有名な「ワトソン」がいます。ベルが電話の実験に成功したときの言葉「ワトソン君、用事がある、ちょっと来てくれたまえ ("Mr. Watson! Come here; I want to see you!")」で有名な人です。偶然なことに、彼も「トーマス・ワトソン」だそうです(Thomas A. Watson)。

交換機は英語でswitchですし、コンピュータはスイッチング素子を使って作られています。電子交換機とコンピュータの構造はほぼ同じだということを考えると面白いワトソンつながりです。

ワトソン博士
▲「ワトソン博士」の構成画面(Windows XP)
Windows 3.1時代は、もっと「ワトソン博士」らしい画面だった