2014年3月28日金曜日

クラウド時代のSI: AWS Summit 2014

私がテキストを担当した「クラウドコンピューティング概要」では、クラウド時代のSIベンダーは「簡単な仕事はなくなる」というメッセージが入っています。

短絡的に「SIがなくなる」と解釈する人もいるようですが、そうじゃありません。現に、ワードプロセッサとコピー機屋プリンターが普及しても、印刷屋さんは健在です。デジカメとインターネットの普及で、写真をプリントする人は減りましたが、写真屋さんは存在します。

なくなったのは、簡単な仕事、誰でも出来る仕事、なくてもいい仕事です。

Web情報サイト「Publickey」によると、サンフランシスコで開催中の「AWS Summit 2014」ではこんなメッセージが出たそうです。

クラウド自身が競争力としてのシステムインテグレータを必要としている

AWS(Amazon Web Services)は、IaaSを中心に展開する世界最大級のクラウド事業者ですが、面白いことにアプリケーションサービスを全く持っていません。

AWSが「アプリケーション」と呼んでいるものは、実際には他のアプリケーションを補完するコンポーネントであり、どちらかというとPaaSのコンポーネントに近いものです。

クラウドの基本は「セルフサービス」ですが、AWSのシステムを企業で使うには、どこかで「システム構築」の作業が必要になります。だからAWSはSIベンダーを必要とし、SIベンダーもAWSを支持するわけです。

では、これがマイクロソフトだったらどうかというと、実はあまり変わらないような気がします。確かにメールサービスやカレンダーサービスのようなアプリケーションを単独で提供していますが、企業活動を維持するには、結局の所どこかで作り込みが必要になるからです。

楽な仕事は自社で行なうでしょうが、難しいところはSIベンダーに発注するのが、結局は安く付く、ということでしょう。

2014年3月27日木曜日

クラウドとWeb 2.0

「Web 2.0」という言葉はちょっと古くなり、「クラウド」という言葉も目新しさはありません。そもそも両者は違う概念です。

「Web 2.0」は、情報の送り手と受け手の区別がなくなった状態、あるいは誰でも情報を発信し、それが一定の影響力を持つような現象を指します。

一方「クラウド」は、必要な時だけ、必要な量のコンピューター資源を使い、使った分だけ支払うという仕組みです。

しかし、両者にはなんとなく同じ「匂い」がします。

インターネットの商用利用が解禁された1996年頃、ISPと契約すると自分のWebサイトが自動的に付いてきた時代がありました。その名残で、私も自分のWebサイトを持っています。

当時の雑誌記事を見ると「これで世界に情報が発信できる」と書いてありました。

しかし、冷静に考えてみると、確かに発信は出来るのですが、誰も受信してくれません。検索エンジンはありましたが、AltaVistaのような自動収集型(ロボット型)の検索サイトは思った結果が表示されず、当時のYahoo!に代表されるディレクトリ型(人手による設定)のサイトは登録に時間がかかるため、キーワードによるコンテンツ検索はほぼ不可能でした(グローバルナレッジをYahoo! Japanに登録してもらうのに数日かかっています)。

そもそもWebサイトを作るには、HTMLを自分で書く必要がありました。HTML構築ツールはありましたが、どちらかというと専門家向けで、そう簡単に使えるものもでありません。

当時の人がいかに苦労したのかは、モデル出身のブロガー「まつゆう*」さんの記事「祝!まつゆう*Webで情報発信15周年」をご覧ください。

ここには書いていませんが、HTMLを書いていると「おたく」と思われて仕事が減ったという話も、今思えば面白い話です。

本当の意味で「情報発信」ができるようになったのは、ブログとトラックバックのおかげだと思います。

ブログサービスは、誰でも簡単に使えるため、自分で自分のコンテンツをすぐに作れます。これは「オンデマンドセルフサービス」という、クラウドにとってとても大事な原理と同じです。

トラックバックは、複数のブログを簡単に結びつけてくれます。現在は、検索エンジンが発達したことと、トラックバックスパムが増えたことから、トラックバックを廃止するところが増えていますが、2000年頃には非常に大事な仕組みでした(トラックバックが最初に実装されたのは2002年だそうです)。

ある会社向けに作った「クラウドコンピューティング」のテキストには、ブログを含めた「Web 2.0」の話が紹介されています。この内容は本当にいるのか、という点については議論があったようですが、最終的に人材育成部の判断で含めることになりました。

確かにクラウドというシステム基盤から、Web 2.0というコンテンツへの説明はちょっと違和感もあります。しかし「誰でも自分で情報発信ができる」というWeb 2.0の特徴から「誰でも自分でシステム基盤が作れる」という風に発展したと考えると納得できるのではないでしょうか。

まつゆう
▲フリーマーケットイベントに来ていたまつゆう*さんと私

2014年3月7日金曜日

たったひとつの冴えたやり方とは限らない、NTFSアクセス許可

公式ブログが公開されました。

Win Win Windowsコラム
第37回 Windows Serverでファイルのアクセス許可を効果的に構成する冴えたやり方

タイトルはもちろんSF小説「たったひとつの冴えたやり方」のパクリなんですが、実は読んでません。すみません。

NTFSのアクセス許可はMCP試験の定番ですが、ファイルサーバーの利用者全員がマスターするには難しすぎますね。

アクセス許可と言えば、もう時効だと思うので書きますが、Windows NT 4.0のMCP試験で、グローバルグループを役割管理に使わなければいけない状況が出題されていて感心しました。

本来、グローバルグループは役割管理に使うものではないので、教科書の丸暗記だと選択肢から外れる項目です。

しかし、問題にある条件を満たす解を考えると、これしか正解はありません。
なかなかの良問でした。

その後、Active Directoryにユニバーサルグループが導入され、特殊なケースも扱いやすくなりました。

MCP試験が、技術力を弁別する能力は今も昔も変わらないと信じていますが、解いていて面白い問題は、Windows NT 4.0からWindows 2000の頃がピークだったように思います。