「AWSが世界のクラウドサービス市場で首位陥落、マイクロソフトが逆転」というニュースが入ってきて、正直ちょっとあわてました。
AWSがクラウド業界のリーディングカンパニーであることは間違いなく、それを追うのがマイクロソフトという構図は変わっていません。また、市場シェアはAWSのざっと半分がAzureというのが一般的な見解です(調査会社によっては4倍程度まで開きます)。
「AWS vs. マイクロソフト」つまり、SaaSを含む全クラウドの売り上げを集計すると、僅差でマイクロソフトが勝ったということです。逆にいうと、ほとんどSaaSを持たないAWSが、僅差で2位というのはいかにAWSが支持されているかの証拠でもあります。
SaaS (Software as a Service) はクラウドの一種ではありますが、利用者の意識はちょっと違うように思いますし、IT技術者の意識もSaaSは区別して考える場合が多いようです。
AWSは最近までSaaSには手を付けていませんでした。マイクロソフトはIaaSとPaaSをAzureとして提供していますが、SaaSは別ブランドです(たとえばOffice 365)。IBMも、IaaSのSoftLayer、PaaSのBluemixを統合しIBM Cloudとしましたが、SaaSは別ブランドです。
SaaSを特別扱いするのは、それがビジネスと直結しているからです。電子メールやドキュメントツールくらいなら、会社による違いはそれほどありませんが、会計システムだと業界ごとの差は大きく、会社ごとの独自性もあります。
マイクロソフトもAWSも、業務に直結したアプリケーションの提案は、ビジネスパートナーの仕事です。マイクロソフトはDynamics 365というERPクラウドを持っていますが、これはクラウドプロバイダーとしてはかなり珍しい存在です。
ただ、近頃のSaaSはアプリケーションから利用するためのAPIが公開されており、実質的なPaaSとして利用できます。CRM(顧客管理)のSaaSで有名なSalesforceは、Salesforce CRMの動作基盤をPaaSとして利用できます。このように、SaaSとPaaSの区別はあまりなくなってきています。
このように、SaaSは定義的はクラウドですし、実体としてもPaaSに寄ってきたので、名実共にクラウドの一種ではあります。
それでも、現段階でSaaSをIaaSと同列に並べるのはちょっと抵抗を感じます。
そういうことを感じながら、「AWS首位陥落」という表現はちょっと違うなあと思いながら書いた記事がこちらです。