2014年5月22日木曜日

フェールオーバー用の DHCP の構成 (Windows Server 2012)

公式コラムでは「Windows移行特集」が始まりました。第1回は「Windowsのマイグレーションと言えば」というタイトルで私が書いています。

英語の「migration」は、ごく一般的な言葉で「人や動物が移動する」ことを意味します。たとえば、アフリカ大陸で見られる「ヌー(Gnu)の大移動」は「The Great Migration」と呼ばれるそうです。UNIXからLinuxに移行することではありません。

GnuプロジェクトのツールがUNIXからLinuxにどんどん移植され、最近ではLinuxが中心になっていることに引っかけてみたんですが、社内では誰も突っ込んでくれませんでした(Gnuプロジェクトの創設者R. M. Stallmanは「Gnu Linuxと呼べ」と言っているので、最初は「WindowsからLinuxへの移行」と書いたのですが、「UNIXからLinusの方が面白い」と社外の方に指摘されて修正しました)。

さて今日の本題です。

Windows Server 2012から、DHCPサーバーの冗長構成(DHCPフェールオーバー)が可能になりました。もう高価で面倒なフェールオーバークラスターを構築する必要はありません。

DHCPフェールオーバーは、DHCPスコープあたり2台のサーバーで構成します。フェールオーバー後の動作を実際に試してみました。いずれも「ホットスタンバイモード」の場合です。

 

●正常時の動作

プライマリDHCPサーバーがIPアドレスをリースします。この情報はスタンバイDHCPサーバーのDHCPスコープに複製されます。

 

●フェールオーバー後の動作

プライマリDHCPが停止すると、一定時間後にスタンパイDHCPがスコープの制御を取得します。

ただし、この情報はDHCPクライアントには伝わりません。そのため、DHCPクライアントからのIPアドレス更新要求は常に自分がIPアドレスを取得したDHCPサーバー(プライマリDHCPサーバー)に対して行われます。

しかし、プライマリDHCPサーバーは停止しているため、更新要求は失敗します。

DHCPクライアントは、IPアドレスの有効期限直前になると、プライマリDHCPサーバーからの更新をあきらめ、新たにIPアドレスのリースをブロードキャストで要求します。

この時、スタンバイDHCPが応答しますが、スタンバイDHCPには既存のDHCPスコープ情報が複製されているため、DHCP要求に含まれるMACアドレスに対して、以前払い出したIPアドレスが再割り当てされます。

結果として、DHCPサーバーは変わりますが、IPアドレスその他のパラメータは以前と同じ情報が配布されます。これによりTCP/IP構成の連続性が保証されます。

 

●フェールバック時の動作

プライマリDHCPサーバーが復旧した場合、一定時間後にスコープの制御がプライマリDHCPサーバーに戻ります。もちろんスコープ情報もすべて複製されます。

スタンバイDHCPサーバーは待機状態になり、IPアドレスの更新要求に答えなくなります。その後はフェールオーバー時と同様の動作で、プライマリDHCPサーバーからIPアドレスを新たに(でも同じIPアドレスで)入手します。

 

●注意

DHCPサーバーがフェールオーバーしているときに、コマンド「ipconfig /renew」を実行すると、IPアドレスが更新できずエラーとなります。

手動でIPアドレスを更新する場合は、「ipconfig /release」を実行し、明示的にIPアドレスを解放してから「ipconfig /renew」を実行してください。

2014年5月11日日曜日

メリー・ポピンズと「ウォルト・ディズニーの約束」

メアリー・ポピンズとCommon Lisp」の続きです。今度こそ技術的な話は登場しませんが、続きなのでこちらに書きます。

ところで私、ずっと「メアリー・ポピンズ」と書いてきましたが、ディズニー映画(ジュリー・アンドリュース主演)の邦題は「メリー・ポピンズ」だということを先月知りました(40年くらい間違って覚えてました)。

お一人様で「ウォルト・ディズニーの約束」を見ました。

「ウォルト・ディズニーの約束」原題は「Saving MR. BANKS」で、「メリー・ポピンズは子供たちではなく、バンクスさんを助けきた」という話と、Saving Account(貯蓄口座、バンクスさんは銀行員です)をかけたのだと思います。

こっちの方がよく出来たタイトルですが、「Mr. BANKS」でメリー・ポピンズを思い出せる人は日本では少数派らしいです。

原作者のP.L.トラバースの少女時代と、ディズニーとの映画化交渉権をめぐる話が交互に進みます。
ディズニーは、多くの作品をめちゃめちゃに、いえ、独自の演出を加えていますから、P.L.トラバースの心配はよく分かります。

プーさんのぬいぐるみを見ながら「A.A.ミルンも可愛そうに」とつぶやくシーンは笑いました(が、他に笑ってる人がいないのはなぜ?)。

「ディズニーは単なる金儲けのために映画を作るのではない」ということで、最後に譲歩するんですが、ここはちょっと物足りなかったように思います。

ウォルト・ディズニー本人が「(駆け出しの頃)『ねずみ』の権利を購入したいという申し出があったが断った」という話をしていますが、もうちょっと聞きたかったところです。

もっとも、映画の本題はP.L.トラバースと父親の話なので、あえて踏み込まなかったのでしょう。

終盤「バンクスさん(メリー・ポピンズがいる家のお父さん)は悪人ではない」ということで、2ペンス(タペンス)で材料を買って、凧の修理をします。2ペンスは、「Feed the Birds」の曲でおなじみ「鳥の餌、1袋2ペンス」です。

「ウォルト・ディズニーの約束」ではここまでしか描かれていないのですが、映画「メリー・ポピンズ」の終盤はこうです。

父を訪ねて銀行に行った子供は、持っている2ペンスを、(鳥の餌を買うのではなく)銀行に預金しろと、銀行員に取り上げられます。

バンクスさんだったか、銀行員だったか忘れました。バンクスさんは、前半、お金に厳しい人に描かれていたので、バンクスさん自身が息子のお金を取り上げたのだったような気もします。

すると、子供は「ぼくの2ペンスを返して」と叫びだし、周囲の人は「2ペンスも返せない銀行か」と誤解して取り付け騒ぎが起き、バンクスさんがクビになるという話だったと思います。

バンクスさんが、責任を問われている会議中、バンクスさんが開き直って、銀行よりも子供の方が大事だと「スーパーカリフラディリステクエクスピアリドーシャス」と歌い出し、なんとなく円満に終わるという話だったような違ったような。
(映画見たの40年くらい前なんで、よく覚えてない)

「ウォルト・ディズニーの約束」では「新しいエンディングを用意した」としか言ってないのですが、これがその「新しいエンディング」です。

P.L.トラバースが、映画化に譲歩したのは、凧ではなく、このエンディングのおかげでしょう。

かなり感動的なシーンなので、詳細は忘れていても、米国人なら当然知っているエピソードなんだそうです(というのは岡田斗司夫さんのお話)。

ということで、だらだら書いてしまいましたが、いいお話でした。

そういえば、同じジュリー・アンドリュース主演の「サウンド・オブ・ミュージック」も、厳格なお父さんが変わっていく話ですね。